ITツールの導入が働き方改革の鍵となりうるか

本日の注目記事

働き方改革関連調査「中小企業の業績別働き方改革の実態・意識調査」
働き方改革に取組む中小企業、業績好調企業で40.9%、不調企業で31.1%
業績好調企業の38.7%「会社への好影響」を実感、業績不調企業は19.9%にとどまる
会社が積極的だと思う取組み内容は「時間外労働の上限設定」「ITツールの導入」「社員のスキルアップ」

(ワークスモバイルジャパン株式会社 2018年6月26日)

ワークスモバイルジャパン株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:石黒豊)が、働き方改革に関連した調査、「中小企業の業績別働き方改革意識・実態調査」を実施し、その結果を2018年6月26日に公表しました。

本レポートでは「時間外労働の上限設定」「ITツールの導入」「社員のスキルアップ」の3点を働き方改革の具体的取り組みとする企業が多いものの、会社の業績に好影響を与えるものとしては前述の3点のうち、「ITツールの導入」「社員のスキルアップ」を挙げる企業が多かったとまとめています(その他として「雇用促進施策」)。

「ITツールの導入」・「社員のスキルアップ」に思うこと

今回は本レポートに注目し、特にITツールの導入と社員のスキルアップについて私の考えを述べたいと思います。時間外労働の上限設定、雇用促進施策についても本来これらのテーマに絡むものではありますが、一旦別の機会に譲ることにします。

IT(ICT)による業務効率化をビジネスとする弊社の設立理由がまさにねらうところなのですが、複雑化する業務を、限られた人びとで行うことが企業経営に求められる昨今、定型化された業務をいかに自社から切り離し(あるいは単純作業化し)、経営者をはじめとする会社全体が本業に集中できる環境を全ての従業員、また関係者に提供することが必須であると私は考えます。そしてまさに観点の有無が日々の経営において、自社への「ITツールの導入」、また「社員のスキルアップ」実施とその成果に大きく影響すると考えます。

そして、そのことに気づけたとして「どのように対策するか」ということにテーマは移りますが、「どのように」について本業に多忙な経営者が十分な情報を持ちうるとは限りませんし、仮にもっていたとしても実施について経営者が直接あれもこれもと関わるのではなく(正直、従業員にとってはうるさい場合もある・・・)、ポイントを抑えつつ、経営の本質部分を担って欲しいという思いがこのビジネスをはじめた私にはあります。

「課題に気づけない」「どのようにしたらいいか分からない」ことがもたらすもの

経営者が、あるいは管理職がこういう場合も多々あります。

そんな時は、ズバリ、進みも後退もしない、「現状維持」となってしまいます(「なにもしない」は「後退」と私は認識しますが)。何もしない、というか、何もできない。組織の効率化や、体制については何らかの改革が必要と思う経営者が今やほとんどと推測していますが、コスト(お金と時間)をかけて、効果が分からない施策をとる経営者はいませんし、それはもっともなことです。しかしそれでいいのかというと、やはりなにも変わることができないですし、問題の先送りになってしまいます。

その結果、「定型業務を担当する従業員の働きに左右される」企業体質になってしまいます。

特に中小企業の場合、ベテラン従業員の退職・休職が起きてしまうと、人員不足によって会社が回らなくなることにもなりかねません。

私は「定型業務を行う従業員」や「ベテラン従業員」が不要だということを言うつもりはありません。中小企業においては人一人の存在価値が大企業よりも高いことは言うまでもないのですから、単純作業で終えてしまう雇用はできるだけ避けて欲しいという思いがありますし、働く人にもあたりまえのことに時間をかけるのではなく、自分の達成感や会社の業績に貢献する自分をイメージできる仕事を担って欲しい思いがあります。ものすごく大雑把に言えば、にわかに話題となっている「AIではできない仕事」を従業員一人一人に1つはもってもらいたいと思うのです。

その方策として「ITツールの導入」・「社員のスキルアップ」が言われるのです。間違ってもこれが目的ではNGです。

2日かかっていた仕事を3時間で(ITツールを駆使した効率化の例)

私がかつて勤務した会社のこと。500件程度の支払管理を前任から引き継ぎました。前任者は毎月の定型業務でしたから、何をすべきか分かっているので、それなりに仕事は早い。それは大したものですが、それは私が聞くにつけ、他人には応用できないし、業務が混乱していてムダの多いものでした。成果物も幸い業務全体に大きな影響があるわけではありませんが、私がみるところで、間違いも見受けられました。

引き継いだ内容は要約すると「500件のデータを一件一件Excelに入力」して仕上げるということでした。この人は月末になると丸二日はこの業務にかかりきりになり、夜遅くまで残業をして帰っていたといいます。

こういうものを一件一件やることなど、あり得ないと考えるのが普通と思います。私は請求データが取引先から送られているはずと考え、前任に聞いたところ、以前からデータによるレポート(csv)はあって、それは来ていたけど「使っていなかった」というのです。おそらく関数が使えなかったか、関数が使えるようなデータの加工を思いつかなかったのだと思います。

何故楽にしようと思わないのか?と考えながら、担当して3回目の月末に、チェックを含めて半日でその業務を終えられるようにしました。

会社としてみれば、前任者の長きにわたる余計な残業代のロスと、それによって働く人の評価を高く見積もったことになります。働く人にとっては、プライベートの時間の損失と、本質的に自分が稼ぐべきスキルに対する認識がずれているという不幸が見て取れるでしょう。本人は残業代をもらって得をしたつもりかも知れませんが、それは見えないロスと見るべきです。

脱線ですが、このように効率化をした私の給与はあがりませんでした。残業をした人にはもらえて、そのスキルを身につけて発揮した人間には何の成果もないどころか「次の仕事」という負担だけ増したのです。程なくこの会社を私は辞めました。

社員のスキルがないと嘆く前に

上の例で言いたいことはなにかというと、ITツールの駆使による効率化の向上はもちろんですが、もうひとつ。社員のスキルアップ(考え方や業務に対する姿勢)も密接に絡むということです。

ITツールに限らず、ツール全般は導入だけしても使えなければ意味がありません。一方で社員のスキルアップは一朝一夕には難しいもの。このような経営管理体制の問題をクリアするためには、課題となる部分を抽出すること(何を)、方策をたてること(どのように)をしっかり組み立てていくことが大切です。

失敗している事例を見ると、「ITツールの導入」が目的になっているケース、問題は見極められていても、オーバースペックな機器やサービスの導入をして、コストや、使える人が不在で、それ自体が経営の負担になってしまっているといった「やり方が間違っている」ケースというのが多くあります。

特にスキルアップは、超基本的なもの(パソコンやソフトウェアの基本操作や、業務ルール的なものなど)は別として、必ずしもパソコンスクールや、参考書を購入することのみがその向上につながる道ではありません。私はむしろそのような考え方を最初にしません。Word・Excel・PowerPointの使い方は知っているけど、基礎資料を作ることができないという人はいます。

例えば、従業員に何のためにその業務があるのか、事業の大枠、業務の背景、成果物(ゴール)を示すことができているでしょうか。ただ、あれをしろ、これをしろと言われてヤル気になる人はまずいません。わけも分からずただ、勉強しろ(技術を身につけろ)といわれて嫌な思いをしたことがある人は多いと思います。それと同じです。

これは仕事の評価(給与改定)にも関わることです。評価とは、あるべき姿を示して行うものではないでしょうか。あいつはできないな、と思う前に、まず経営者として従業員に何を伝えられているか、あるいはいないかを見ていくことも必要かと思います。

スキルアップの話しに戻しますが、そうした目的観において、従業員に対して願うこと(スキルアップももちろん含む)を伝えることで従業員のやる気につなげる方策もあります。ただ、担当者や外部のコンサルを入れて体制を整えればいい、ツールを導入すればいい、スキルアップは学校や参考書、研修を行えば良い、というわけではないのです。

「経営者のリーダーシップ」ということばはあちこちで聞きますが、この究極の実施体制は経営者でないとできません。経営者にとって、まず行って欲しいことが、もっとも身近に、直接のコスト増をせずともできることが、ここで示すことをはじめ、たくさんあるのです。

まとまらない文章となりましたが、本業の業績を上げるために、まだまだたくさんできることがある、そんなことをお伝えしたい気持ちを込めて、今回のコラムを終わりにしたいと思います。もちろん今回書いたことを十分理解しながらも悩んでいる経営者、管理職の皆さんは多いことと思いますから、そこは是非ご相談いただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本日の記事の概要

記事URL:
https://line.worksmobile.com/jp/home/pr/20180626

掲載されていたサマリ:

調査結果サマリ

① 働き方改革に取組む中小企業は約4割 2017年10月に実施したワークスモバイル ジャパン「中小企業の働き方改革意識・実態調査」との比較ではほぼ横ばいという結果に
業績別では、好調中小企業で40.9%、不調中小企業で31.1%が働き方改革に取り組む
② 業績好調な中小企業の社員では38.7%が「働き方改革が会社に好影響」と回答
業績不調な中小企業の社員では19.9%にとどまり、約2割のギャップが明らかに
③ 業績別に見ると、取組み内容の中で効果の実感に最も差があるのが「ITツールの導入」
業績好調な中小企業の社員では28%が「ITツールが会社に好影響」と回答したのに対し、不調な中小企業の社員では6.3%にとどまる
④ 会社が積極的だと思う取組み内容TOP3、1位「時間外労働の上限設定」、2位「ITツールの導入」、3位「社員のスキルアップ」

 

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